2010-06-27

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子供を見ていると、大人の持つ性格のすべてがあるといっていいくらいである。
その中の一つに「へそまがり」というものがある。きょうも知樹を見ていると「おかあさん、パイパイ」という。啓子が「はい、あげますよ」というと「いらない」という。「そう、いらないの」というと「いる。おかあさん、パイパイ」という。
ああいえばこういう、こういえばああいう、この性質が先天的にある。
その意味をようやく気がついた。あれは鎖につながれた犬が地面を掘るのと同様の現象である。精神の運動である。何か抵抗を作って、それと格闘(?)しないと面白くない人間の心のあらわれである。
人間の罪のさまざま、芸術のさまざまも、この本能的精神体操から来るものが実に多い。

山田風太郎「育児日記」

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