明石が、幼年学校、士官学校、陸大から以降の軍人生活で、日常決して勉強家ではなく、授業中、会議中、よく居眠りすることで有名であったし、ふだんでもポカンと口をあけて放心状態でいることが多かったのに、成績優秀、任務完璧であった秘密は、他面における彼の没入性にあったといわれる。自分にとって無用と思われる勉強や会議は居眠りで放棄し、自分にとって必要と思われることに対しては、一意専心、猛然として全力を注ぐ。――エネルギーの効率的計算というより、そういう先天的な能力が、明石を明石たらしめたのである。
山田風太郎「ラスプーチンが来た」
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