2010-08-11

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裁判長 「井筒。その売りに行ったときの状況を述べてみよ。」
井筒  「はい。麹町三丁目の村越刀剣店へ行きまして、なるたけ何気ない顔で、刀を売りたいのだ、と申しました。小さなおばあさんが猫を抱いて店番をしていましたが、三味線屋じゃ猫も居辛いだろうが、刀屋ならそんなこともあるまいとふと考えました。」
裁判長 「そんなことはどうでもよろしい。」

三島由紀夫「豊饒の海・奔馬」

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