2010-10-27

500

ぎたる弾く
ぎたる弾く
ひとりしおもへば
たそがれは音なくあゆみ
石造の都会
またその上を走る汽車電車のたぐひ
それら音なくして過ぎゆくごとし
わが愛のごときも永遠の歩行をやめず
ゆくもかへるも
やさしくなみだにうるみ
ひとびとの瞳は街頭にとぢらる。
ああ いのちの孤独
われより出でて徘徊し
歩道に種を蒔きてゆく
種を蒔く人
みづを撒く人
光るしやつぽのひと そのこども
しぬびあるきのたそがれに
眼もおよばぬ東京の
いはんかたなきはるけさおぼえ
ぎたる弾く
ぎたる弾く
(「ぎたる弾くひと」)

「萩原朔太郎詩集」河上徹太郎編

0 件のコメント:

コメントを投稿