中年から晩年へかけての彼に接したスタニフラーフスキイや友人のメンシコフの話によると、人中での態度は控え目で寧ろおどおどしているくらい、率直で上辺を飾らず、絶えて美辞麗句を口にしない。更にメンシコフによれば、彼は進取の気象とユーモアに富んだ生活人であり、潔癖な現実家であって、一切のロマンチックなもの、形而上的なもの、センチメンタルなものの敵として、すこぶるイギリス型の紳士であった、等々。……要するにわれわれはこれらの証言の綜合から、ブーニンのいわゆる「稀に見る美しい円満な力強い性格」の人を表象することに、なんの無理も感じないのである。そこには又しても、ロシヤ的なものからの鋭い切断がある。
神西清「チェーホフ序説」
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