2010-12-09

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何年間も生きつづける……生きていることが、柔和で善良な、悔い改めた人間になる役に立つかどうか、それはわからぬことだ。彼女の信仰は鮮明なイメージを、クリスマスのときの秣桶(まぐさおけ)をいだいていた。善良さはここで終り、牛と羊をすぎて、悪がはじまる、ーー(略)絶望や情熱にもだえている瞬間には、とつぜん悪の側へつくことができる。だけど長い一生のあいだには、善という守護者が、何の呵責もいだかせずに、「浄福の死」へと追い立てるのだ。

グレアム・グリーン『ブライトン・ロック』

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