2011-03-03

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映画のフィルムから火が出たとか、見物の子供を二階からぽんぽん投げおろしたとか、怪我人はなかったとか、今は村の繭も米も入っていなくてよかったとか、人々はあちこちで似たことを声高にしゃべり合っているのに、みな火に向って無言でいるような、遠近の中心の抜けたような、一つの静かさが火事場を統一していた。

川端康成『雪国』

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