2012-04-05

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突然、遠くから、朗々と響く美しい声が――男の声が――星月夜の下にうたいだした。小鳥のさえずりのように、妙な魅力と抑揚――小鳥から学んだように思われる、あの民衆感情をあらわす日本特有の抑揚――にとんだ歌声が。だれか幸福な職人が、家へ帰る道すがらうたいだしたものであろう。
(「心中」)

『小泉八雲集』上田和夫訳

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