Honnobassui
yonda hon de kininatta tokoro memo
2012-06-29
745
老人はあたりを見まわし、あらためて自分の孤独を痛感した。が、かれは黒々とした深い水のなかに七色のプリズムをのぞき見ることができた。それに眼の前には綱がまっすぐ伸びており、しずまりかえった海洋の不気味なうねりが見てとれる。貿易風にともなって雲がむくむく立ち昇りはじめた。ふと、前のほうを見ると野鴨の一群が空にくっきりその形を刻みこんだような影を見せて水の上を渡っていく。一瞬影が薄くなる。が、つぎの瞬間にはふたたびくっきりした形をとる。海の上に孤独はない、と老人はつくづく思った。
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