2010-07-02

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全く厭世と極って了えば寧そ(いっそ)楽だろうが、其時は矛盾だったから苦しんだ。世の中が何となく面白くない。と云った所で、捨てる訳にはゆかん。何となく懐かしい所もある。理論から云っても、人生は生活の価値あるものやら、無いものやら解らん・・・つまる所、こんな煮え切らぬ感情があるから、苦しい境涯に居たのは事実だ。が、これは「厭世」と名くべきものじゃ無かろうと思う。

二葉亭四迷「平凡/私は懐疑派だ」(「予が半生の懺悔)」

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