そこでかれこれする間(うち)に、ごく下等な女に出会った事がある。私とは正反対に、非常な快活な奴で、鼻唄で世の中を渡ってるような女だった。無論浅薄じゃあるけれども、其処にまた活々とした処がある。私の様に死んじゃ居ない。で、其女の大口開いて「アハハハハ」と笑うような態度が、実に不思議な一種の引力(アトラクション)を起させる。
あながち惚れたという訳でも無い。が、何だか自分に欠乏してる生命の泉というものが、彼女(むこう)には沸々と湧いている様な感じがする。
二葉亭四迷「平凡/私は懐疑派だ」(「予が半生の懺悔」)
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