2010-07-14

343

恋する男の心が恋の他のものを容れなくなって、他人の悲しみに対する同情さえ失っているのを、本多はありありと認めたが、清顕の冷たい硬い玻璃の心が、もともと純粋な情熱の理想的な容器(いれもの)であったことを認めないわけには行かなかった。

三島由紀夫「豊饒の海・春の雪」

0 件のコメント:

コメントを投稿