2010-07-15

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寡黙と素朴と明快な笑顔は、多くの場合、信頼のおける性格と、敢為の気性と、それから死を軽んずる意気とのあらわれであり、弁舌、大言壮語、皮肉な微笑などはしばしば怯惰をあらわしていた。蒼白や病身は、或る場合には、人を凌ぐ狂おしい精力の源泉だった。概して肥った男は臆病でいながら慎重を欠き、痩せて論理的な男は直観を欠いていた。
顔や外見が実に多くのことを語るのに勲は気づいた。

三島由紀夫「豊饒の海・奔馬」

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