Honnobassui
yonda hon de kininatta tokoro memo
2010-08-05
351
幽暗に泛ぶ女の顔にはまだ名がつけられず、名に先立つ匂いやかな現前がある。それは夜の小径をゆくときに、花を見るより前(さき)に聞く木犀の香りのようなものである。勲はそういうものをこそ、一瞬ではなく永くとどめておきたい心地がしている。そのときこそ、女は女であり、名づけられる或る人ではないからだ。
三島由紀夫「豊饒の海・奔馬」
0 件のコメント:
コメントを投稿
次の投稿
前の投稿
ホーム
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿