2010-08-20

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この世界を根こそぎ破壊して、無に帰せしめることは造作もなかった。自分が死ねば確実にそうなるのだ。世間から忘れられた老人でも、死という無上の破壊力をなお持ち合せていることが少し得意だったのである。本多はいささかも五衰を怖れていなかった。

三島由紀夫「豊饒の海・天人五衰」

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