2010-08-24

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一寸ばかり育ちがいいという印象を与えるだけで、社会的信用は格段に増すし、日本で「育ちがいい」ということは、つまり西洋風な生活を体で知っているというだけのことなんだからね。純然たる日本人というのは、下層階級か危険人物かどちらかなのだ。これからの日本では、そのどちらも少なくなるだろう。日本という純粋な毒は薄まって、世界中のどこの国の人の口にも合う嗜好品になったのだ。

三島由紀夫「豊饒の海・天人五衰」

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