2010-10-04

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コリアー女史は次のように知らせてくれた。「ええ、そうよ。なんかこうあるのよね。あの娘(マリリン・モンロー)って、うつくしい子供なのよ。と言っても、わたしはわかりやすく言ってるつもりはないのよ。あの娘は女優なんかじゃないと思うのよ、どんな伝統的な意味でもよ。あの娘の持ってるもの――あの存在感、あの聡明さ、あの才気煥発――は、けっして舞台では表に出ないわ。とっても脆くて微妙だから、映像でしか捉えられない。飛んでるハチドリみたいなもので、カメラしかその趣を固定できないってわけね。でも、単純にあの娘はハーローの二代目だとか、売女(ハーロット)だとか思っている人は、頭がおかしいのよ。(略)
このうつくしい子供は、修行とか犠牲とかの概念には当てはまらないのよ。なんだか、あの娘、長生きしないだろうなって思うの。言ったらなんだけど、なぜかしら若死にするって感じ。だから、あの娘が長生きして、閉じ込められた精霊のように彼女の体中をさまよっている奇妙で美しい才能を充分に発揮できるよう思っているどころか願っているってわけなのよ」

トルーマン・カポーティ「カメレオンのための音楽」

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