2010-10-25

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この黄昏の野原のなかを
耳のながい象たちがぞろりぞろりと歩いてゐる。
黄色い夕月が風にゆらいで
あちこちに帽子のやうな草つぱがひらひらする。
さびしいですか、お嬢さん!
ここに小さな笛があつてその音色は澄んだ緑です。
やさしく歌口をお吹きなさい
とうめいなる空にふるへて
あなたの蜃気楼をよびよせなさい
(「緑色の笛」より)

「萩原朔太郎詩集」河上徹太郎編

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