2010-10-25

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詩はいつも時流の先導に立つて、来るべき世紀の感情を最も鋭敏に触知するものである。されば詩集の真の評価は、すくなくとも出版後五年、十年を経て決せらるべきである。五年、十年の後、はじめて一般の俗衆は、詩の今現に居る地位に追ひつくであらう。即ち詩は、発表することのいよいよ早くして、理解されることのいよいよ遅きを普通とする。(略)詩が常に俗衆を眼下に見くだし、時代の空気に高く超越して、もつとも高潔清廉の気風を尊ぶのは、それの本質に於て全く自然である。

「萩原朔太郎詩集」河上徹太郎編

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