「私はこう思いたいのです、――人間精神というものは、大自然と争闘してきたと同時に、肉情をも敵として、これと争闘してきたものであると。そしてたとえ、人間精神はまだ肉情を征服しきれないでいるとしても、少なくも肉情を、友情といい愛情という幻想の綱でもって捕えることは出来たと、私は思うのです。少なくとも私にとっては、それはもはや犬や蛙におけるような、単なる獣性の作用ではなくて、真の愛であり、抱擁の一つ一つにも女性に対する心からの清らかな感動と尊敬とが籠っている筈です。」
(「アリアドナ」)
チェーホフ「カシタンカ・ねむい 他七篇」
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