2010-11-02

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ところで「諦らめよ」と独語している精神は、「曾ては闘争を好んだが今は陰鬱な精神」であり、「大雪が凍死体を埋めてゆくように」刻々に『時』に飲まれてゆくことを自覚している精神であり、もはや「高みより地球の円い形を眺めつつ」逃げかくれする気力もなく、「雪崩よ、落ちて来ておれを運び去れ」と呟くほかない精神なのである。

神西清「チェーホフ序説」

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