2011-09-24

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この「怪異投込寺」の主人公葛飾北斎の多才と風狂もまた、作者山田さん自身の心情を彷彿せしめるものがある。配するに東洲斎写楽をもってし、異様の空想をほしいままにしている。
写楽が北斎のような奇行の人であったかどうか私は知らないが、彼を投込寺の墓守とした奇想は、まことに山田小説の醍醐味である。さらに遊女と津軽公の登場、豪華と好色と奇矯と怪異の巧みなる調合。私はこれを読んで、時代と風味は違うけどれも、芥川の名作「地獄変」を思い出したものである。

日下三蔵「解説」

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