2011-12-09

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抒情歌とよく似た感覚を覚えましたのも、かういふ心情の奇蹟が、夢のなかで起る超自然な事件のやうにありありと素直にあらたかに行はれるからであり、鏡花のやうな「信仰」で書かれた文学だからだと存じますが、その信仰のなかに主人公の少女が甘く溺れて、作者が大声でよびかけても容易に気づかないやうな恍惚感に涵(ひた)つてゐる点で、作品としての完璧が保障されてゐるのを感じました。

『川端康成・三島由紀夫 往復書簡』
(S21.6.5 三島→川端)

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