古い体制に育った日本人のなかに、決してほめすぎにはならない、礼儀正しさや、無心無欲や、善意にみちた優雅に、われわれは出会うことがある。当世風の若い世代の連中のあいだからは、こういったものはほとんど姿を消している。(略)
いったい、彼らが父祖から受け継いだはずの、あの崇高な魅惑的な美質はどこへ行ったのであろうか。あるいは、そうした美質のうちでもっともすぐれたものは、たんなる努力――過労のあまり特性をすりへらして、重さも均衡もなくしてしまう努力に、変質してしまったのではなかろうか。
(「日本人の微笑)」
『小泉八雲集』上田和夫訳
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