2012-04-17

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ここには、罪のもっとも単純な結果を哀切にしめすことによって罪を思い知らせるという、容赦のない、しかし思いやりある正しいさばきがあった。ここには、死ぬ前に、ひたすら赦しを乞う、必死の悔恨があった。そしてここには、おそらく怒ればこの帝国でももっとも危険なものになったと思われる大衆が――すべてを理解し、すべてのことに感動し、悔恨と恥じらいに満足し、人生の困難と人間性の弱さをすなおに深く経験しているがゆえに、怒りではなく、ただ罪に対する大きな悲しみをいだいている大衆が、いたのである。
(「停車場にて」)

『小泉八雲集』上田和夫訳

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