2012-04-19

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いっさいが、なんともいえぬほど古めかしく奇妙であることから――時空を遠く隔てているという――無気味な距離感をいだかせ、目に見えるものの実在性を疑わしめる。しかも、焼津の生活は、たしかに何世紀も昔の生活なのである。土地の人びともまた、古い日本の人間なのである。子供のように――善良な子供たちのように――素直で、親切で、欠点といってよいほど正直で、これから先のことなど思いもせず、古いしきたりや古い神仏に忠実なのである。
(「焼津にて)」

『小泉八雲集』上田和夫訳

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