2010-05-24

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国民に戦意がないと叱る。しかし戦意がないのは誰であるか。上層の十人の秘密が中層の百人に洩れ、下層の千人に伝わるならば、上層の十人の戦意喪失は、中層の千人に、下層の万人に広がるのは当然ではないか。
それならば、なぜ戦争を始めたのか。政府の宣言する如くんば、この戦争は自存自衛の聖戦であるという。それならばなぜその信念に殉じないのか。
血みどろになって、飢餓と爆撃の中に黙々と新聞を信じて戦っている国民の哀れむべきかな。
(s20.8.10)

山田風太郎「戦中派不戦日記」

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