2010-05-27

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周囲と愉快な関係が持続している間は、笑い声の裏に、淋しい、こんなことはしていられないといった焦燥が絶えない。それで気分が沈鬱になって、みなから変人扱いにされ除者にされて、独り黙黙と座っているとき、はじめて心の成長が意識される。しかしそれはまた何という別の淋しさであろう。
外が賑やかなときは内が淋しい。内が賑やかなときは外が淋しい。内も賑やかで外も賑やかなことは曾て経験したことがない。
空想するのに、これを満足せしめるのは、愛か智恵であろう。-中略-
内をも外をも賑やかにするのは、智恵ある人と智恵ある話をすることであろう。
(s20.10.8)

山田風太郎「戦中派不戦日記」

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