2010-05-27

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われわれは、この苦悶の激動の中に、「後世の史家がすべてを証明してくれるであろう」と屠腹の血を以て書き残していった一軍人の叫びに全幅的に共鳴する。
軍人を憎んではならない。少くともその大部分は、官吏や産業人のごとく自己の私欲から来た罪を認めがたいからである。
今はあらゆるものが口を極めて、色々なことを叫びまわっている。尊いものも立派なものも、無茶苦茶に罵っている。しかし、人間の真実はやがてふたたび日本に炬火となって甦えるであろう。
(s20.10.17)

山田風太郎「戦中派不戦日記」

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