2010-08-18

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長い汽車旅行の疲れにもめげぬ、ふしぎな若々しい心逸りが、本多を一種陽気な不安の状態に置いていた。ホテルの窓外には、息苦しい西日が充ちていた。その中へ身を躍らせてゆけば、すぐにも神秘を手づかみにできそうな気がしたのである。

三島由紀夫「豊饒の海・暁の寺」

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