2010-10-22

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すべてのよい叙情詩には、理屈や言葉で説明することの出来ない一種の美感が伴ふ。これを詩のにほひといふ。(人によっては気韻とか気稟(きひん)とかいふ)にほひは詩の主眼とする陶酔的気分の要素である。順(したが)ってこのにほひの稀薄な詩は韻文としての価値のすくないものであつて、言はば香味を欠いた酒のようなものである。かういふ酒を私は好まない。

「萩原朔太郎詩集」河上徹太郎編

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