2011-10-31

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戦争が一途に烈しくなつて、文学の仕事机は急速に窄(せば)められてまゐりました。紙一帖わづかに置く余裕があるばかりです。ペンを動かすにも、肘がつかへ、思ふままに動きません。このやうな時に死物狂ひに仕事をすることが、果して文学の神意に叶ふものか、それはわかりません。ただ何かに叶つてゐる、といふ必死の意識があるばかりです。

『川端康成・三島由紀夫 往復書簡』
(S20.7.18 三島→川端)

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