文学の本当の意味の新らしさといふことも考へる折が多いのですが、それはただ端的に時代意識が灼きついてゐるといふ意味だけでなく、現在といふもののめくるめくやうな無意味な瞬間を、痴呆に似たのどけさで歌つたものといふ意味も持つてしかるべきでせうし、言葉、文章、様式等のすべてに於て今まで概念の古さも新らしさも超越した新らしさ(即ち、嘗てあつた、と嘗てなかつた、といふことを新旧弁別の唯一の基準とする態度をこえて)も考へられるのではないかと存じます。
『川端康成・三島由紀夫 往復書簡』
(S20.7.18 三島→川端)
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